不動産所得の青色申告特別控除とは

こんにちは。兵庫県明石市の税理士、平太誠です。
青色申告控除は、事業所得のみならず不動産所得にも適用することができます。
ただ、事業所得とは、控除額の範囲や考え方が少し違います。

不動産所得の青色申告特別控除について

●控除額の種類と要件

・10万円控除
 簡易簿記でも適用可能
 記帳帳簿の保存が必要
 不動産所得の規模は小さくてもOK(1室とかでも問題ない)

・65万円(または55万円控除)
 不動産事業が、「事業的規模」であり、複式簿記による記帳が必要。
 電子申告による期限内申告をする(書面申告は55万円控除)

上記のとおり、65万円控除するためには、「事業的規模」であることや、複式簿記、電子申告する、という条件があります。
では事業的規模の要件とは?

「事業的規模」の判定

不動産貸付が事業的規模であるか判定する基準は以下のとおりです。

その1:実質基準
 社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断します。
 この判定では、営利性・有償性の有無、反復・継続性の有無、自己の危険と計算における事業遂行性、精神的・肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無などを総合的に判断することになります。
 不動産貸付業の実態はどんなものか、本業としてやっているのかということが問われているわけですが、判断が難しいものです。
 そこで、実務上は次に説明する形式基準で判断することが多いです。

その2:形式基準
 いわゆる5棟10室基準といわれるもので、一定数以上の貸付をしていれば「事業的規模」と認められます。
 ①建物の場合
 貸間、アパートについては、独立した室数がおおむね10室以上であること
 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること

 ②土地の場合
 土地、駐車場の契約件数が、おおむね50件以上であること(1室の貸付けに相当する土地の契約件数を、おおむね5件として判定します)

 
順番としては、まず形式基準で判断して、該当していれば文句なく「事業的規模」です。
では、形式基準に該当しなかった場合、絶対に「事業的規模」として認められないのでしょうか。
可能性は低いです。しかし、絶対かといえばそうではありません。
実質基準に照らして、該当すれば「事業的規模」になります。
サラリーマンが片手間に不動産貸付をしているだけでは厳しいですが、本業として不動産貸付業で生計を立てているのであれば、「事業的規模」として認められる余地は十分にあります。

事業所得もある場合はどうなる

不動産所得と事業所得があり、青色申告特別控除を受ける場合について。
青色申告控除は、納税者単位で適用されます。
つまり事業所得で65万円、不動産所得で65万円、合計130万円適用ということはありません。控除は1回だけです。
なお、10万円か65万円の判定については、どちらかの所得区分で満たせば良いことになります。
例えば、
不動産所得が少規模でも、事業所得で要件(複式簿記、電子申告など)を満たしていれば、65万円控除が適用できます。
なお、控除は不動産所得から先に控除します。

(計算例)
事業所得 500万円
不動産所得 40万円
青色申告控除 65万円

●青色申告控除適用後
事業所得 475万円(500万ー25万)
不動産所得 0万円(40万ー40万)


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