簡易簿記と複式簿記の違い

こんにちは。兵庫県明石市の税理士、平太誠です。
事業のお金の流れを記録するためには、帳簿を作成しなければなりません。
帳簿の種類として、大きくわけて「簡易簿記」と「複式簿記」の2つがあります。
いったいどちらで作成すべきなのでしょうか。
簡易簿記とは
簡易簿記とは、その名の通り、シンプルで簡単に作成できる簿記です。
家計簿・お小遣い帳のようなイメージになります。
エクセル又は手書きで十分作成可能ですので、コストがかかりません。
【作成方法】
簡易簿記の場合、基本的には収入や支出のみ記録しますので、売上帳と経費帳を用意します。
収入があった場合は売上帳に、
日付、金額、取引先を記録します。
支出があった場合は経費帳に、
日付、金額、種類(消耗品代など)、購入先を記録します。
最終的には、日々の記録を集計することで、年間の収支が完成します。
〇メリット
簡単で分かりやすく、特別な知識も必要ないため、小規模な事業者に適しています。
時間と労力もそれほどかかりません。
●デメリット
個人事業主の場合、青色申告特別控除が10万円までとなってしまい、税制上の優遇が受けられません。
損益計算書は作成できるが、貸借対照表という決算書が作成できないため、経営分析ができません。
複式簿記とは
複式簿記とは、簡易よりも複雑で、詳細な記録をする簿記です。
簿記の知識を活用し、いわゆる「仕訳」という方法を用いて日々の取引を記録します。
一般的に会計ソフトを使用して記録するので、一定のコストがかかります。
【作成方法】
取引を原因と結果という2つの要素に分解して記録していきます。
現金売上があった場合、
現金10,000円 売上10,000円
と記録します。
これは、売上が発生し、その結果手元の現金が増えたという記録になります。
簡易簿記では片方向の記録であるのに対し、複式簿記では必ず取引の2面性を捉えて記録します。
経費の支払いがあった場合、
消耗品費2,000円 現金2,000円
と記録します。
消耗品費という経費が発生し、現金が減ったという記録になります。
先ほどの簡易簿記と何が違うのでしょうか?
複式簿記になると、現金の記録が増えました。
現金の残高が記録されていくということです。
複式簿記の特徴は、手元にある資産や負債を把握できることです。
これにより、損益計算書だけでなく、貸借対照表が作成できることになります。
〇メリット
資産負債を把握でき、詳細な経営分析が可能。
個人事業主の青色申告特別控除が最大65万円になり、税制上の優遇がある。
融資を受けやすくなる。
●デメリット
複雑で難しく、知識が必要。(外注する場合にはコスト)
専用のソフトが必要でコストがかかる。
どちらを選ぶべきか
時間や労力がかかるものの、青色申告特別控除という税制上の優遇措置を考えると、やはり複式簿記を選びたいところです。
控除額10万円と65万円で「55万円の差」ですが、税率が20%であれば年間11万円の節税効果があるわけです。
ただし、複式簿記の作成に時間や労力、さらに外注などの金銭コストもかかるようでは、本末転倒です。
また、知識不足により、誤った記録がされてしまうリスクもあります。
節税効果とコストを天秤にかけ、規模が小さいうちは、簡易簿記から始めてみるのも良いかと思います。

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