「投げ銭」は消費税の課税対象となるのか?

こんにちは。兵庫県明石市のひとり税理士、平太誠です。
ライブ配信や動画投稿などの活動で、「投げ銭(スパチャ、ギフトなど)」を受け取るクリエイターの方が増えています。
こうした収益について、事業として配信を行っていれば、所得税の対象となります。
では、消費税の課税関係はどうでしょうか。
今回は、「投げ銭」に係る消費税の課税関係について解説します。

消費税が課される「4つの要件」

消費税は、以下の4つの条件をすべて満たす「課税取引」に対して課税されます。

①国内において

②事業として行われる

③資産の譲渡、貸付け、役務の提供である

④対価を得ている

上記のどれかひとつでも満たしてないとなれば、消費税は「対象外」となります。
「投げ銭」の課税関係を考える場合、問題となるのは、①「国内において」④「対価性を得ている」の2点かと思います。

「国内において」の判定:電気通信利用役務の提供とは?

インターネット配信など、電子的手段を通じて行われるサービス提供においては、「電気通信利用役務の提供」という考え方が用いられます。
どんなものかというと、

・YouTubeやツイキャス、Twitchなどの配信プラットフォームを通じて行われる動画配信
・視聴者との間接的な課金システム(投げ銭)を通じた報酬の受取り

このようなサービスの「国内において」の判定は、サービスの提供者の所在地ではなく、「サービスの提供を受ける者(=視聴者)の住所等が国内かどうか」で行われます。

したがって、視聴者が国外の者である場合は、「国内において」という要件を欠くため、不課税取引ということになります。(視聴者の国において消費税の対象となる可能性がある。)
また、投げ銭に係る収益を、プラットフォームから間接的に受け取る形となっている場合には、プラットフォーム本社が国外に所在する場合は、不課税取引ということになります。

投げ銭に「対価性」はあるのか?

投げ銭は、配信者のパフォーマンス、または視聴者への反応(名前の読み上げ、特別メッセージ、リアクション)などに対する対価としての性格を持つことは確かです。
「顧客の希望に沿った行動」への対価という点では、他の役務提供と本質的に変わりはないと言えます。

一方で、一般的な動画配信サービスなどでは、投げ銭を支払わなくても配信を視聴することができ、視聴したからといって投げ銭を支払う義務があるわけでもありません。
このことから、投げ銭は、視聴者からの任意かつ好意的な要素が強く、配信者が行うサービスや役務への直接的な対価ではないと考えられます。
「応援の気持ち」や「感謝の表現」であって、提供されるサービスが明確に決められているメンバーシップ制度などとは性質が異なります。

つまり、投げ銭によって提供されるサービスが明確に決められてない場合、対価性はなく、課税取引の要件を欠くため不課税取引となります。
ただし、「投げ銭したら〇〇します!」という形で明確に反対給付の提供を行っている場合には、対価性があるものと判断されることとなります。

まとめ

投げ銭についての消費税課税関係の論点は2つ。
「国内において」の要件については、視聴者の住所等によって判断されるという点。
「対価性があるか」の要件については、基本的には寄付的な要素が強いため、対価性のないものと判断します。
ただし、見返りが明確な場合には対価性があるものと判断できるため、注意が必要かと思います。





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